引越業会には、
「標準引越運送約款(ひょうじゅんひっこしうんそうやっかん)」
という国土交通省の定めたルールがあります。
これは、引越業者と利用者が引っ越し契約を結ぶ前に、様々なトラブルを未然に防ぐ目的で作られました。
標準引越運送約款は、約30項目に分けられた条項がさらに細かく定められているので、一般の利用者にはわかりずらい内容になっています。
しかし、これを理解しておかないとトラブルにつながることもあります。
ここでは、国土交通省が定める標準引越運送約款から、特に知っておきたい内容をいくつか紹介します。
標準引越運送約款で知っておくべき4項目
標準引越運送約款は、運送業者と荷送人との間にトラブルが起こらないように、国土交通省により定められました。
守らなければ法で罰せられるわけではありません。
しかし、引っ越しをお願いする立場としては、何かあった時に保証を受けられるようにルールを守るようにしましょう。
ここでは、標準引越運送約款の中でも
「引越業者が運べない物」
「引っ越し見積り時の手付金は不要」
「引っ越しの荷造りをすませておく」
「荷物の破損、紛失、損害賠償」
について紹介します。
引っ越しで引越業者が運べない物
引越業者はお願いすれば、何でも運んでくれるわけではありません。
標準引越運送約款によって「運んではいけない」と定められているものがあるのです。
引っ越しの際には、運んでもらえないものを把握しておく必要があります。
ただ、標準引越運送約款で「運んではいけない」とされているものの中にも、オプションサービスで運んでくれる物もありますので、あなたの引っ越しの際には必ず確認してください。
貴重品
・現金
・有価証券
・宝石貴金属
・預金通帳
・キャッシュカード
・印鑑
引っ越し以外でも、貴重品の絡んだトラブルは非常に多いので、トラブル防止のために作られた当然のルールだと思います。
「引越業者に黙っていれば運んでもらえるんでしょ?」
と思われるかもしれませんが、標準引越運送約款により運べない物としてあらかじめ決められている物なので、引っ越し中に紛失しても保証されるとは限りません。
引っ越し時には貴重品は自分で運ぶようにしましょう。
他の荷物に損害を及ぼす恐れのある物
・火薬類
・危険物
・不潔な物品
運んでいる最中に爆発や引火、悪臭を放つ可能性のあるものは運んでもらえません。
これらに該当するものはレンタカーを借りるなどして自分で運びましょう。
危険物として扱われてしまうものは、
・高純度のアルコール
・ガスボンベ
・酸素ボンベ
・消火器
・灯油が入ったままのストーブ
などが挙げられます。また、食用油や、殺虫剤なども、多量の場合は危険物とみなされる場合があります。
ストーブは灯油を使い切るか、灯油を抜くなどしてから引っ越し当日を迎えるようにしましょう。
生活用品の中には爆発する物や、引火しやすい物もありますので、改めてよく見直してみましょう。
そして、気になるものがあれば引越し屋さんに前もって確認しておきましょう。
運送にあたって特殊な管理を要する物
・動物
・植物
・ピアノ
・美術品
・骨董品
動物は、逃げ出す可能性があるので引越業者は運んでくれません。
植物も原型を保持することが難しいため運んでもらえません。
鉢などの状態であれば、ダンボールへ蓋をしない状態であれば運んでもらえる物もあるかも知れませんので、家まで見積りに来た引越業者の営業マンに、必ず確認しておきましょう。
ピアノ、美術品、骨董品などは専門の運搬業者がいます。
引越業者によっては、オプションサービスで運んでくれる引越業者もあるので確認してみましょう。
ただし、引越業者がOKを出せば運んでもらえる物もあり、この限りではありません。
引越業者にOKがもらえれば、責任をもって運んでくれます。
引っ越し見積り時の手付金は不要
標準引越運送約款には
「引っ越し見積りは無料。内金、手付金等を請求しない」
とあります。
そうなんです。引越業者は見積りを無料で行わなければならないのです!
わざわざ、家に見積りに来てもらうのも申し訳ない気もしますが、そこは引越業者の仕事の一部なので臆することなく料金交渉してください。
もしも、営業マンに内金や手付金を請求されたら、その引越業者は標準引越運送約款に違反しているので、信用できません。
お断りしましょう。
引っ越しの荷造りをすませておく
標準引越運送約款には、
「荷送人は荷物の性質、重量、容積、運送距離等に応じて運送に適するように荷造りをしなければならない。」
という項目があり、引っ越し当日、引越し作業員に荷造りが不適切だと言われた場合には、速やかに対応しなければなりません。
引っ越し当日に荷造りが間に合わない場合は、標準引越運送約款によると引っ越しの解約手数料(引越し料金の20%以内)を支払うか、引越業者に梱包サービスを有料で依頼することになります。
引越業者が到着した時点で、あなたの荷造りが完了していないというのはルール違反になります。
お任せパック等でないのであれば、引越業者到着前に必ず荷造りを済ませておきましょう。
荷物の破損、紛失、損害賠償
標準引越運送約款によると、
「3ヵ月以内に荷受人から通知がなければ消滅。1年を経過したときは時効によって消滅する。」
と書かれています。
つまり、引っ越し後に荷物の破損や紛失に気が付いた場合には、3ヵ月以内に引越業者に連絡して、その補償等の話し合いも1年以内に解決する必要があるということになります。
一目でわかる大きな傷であればすぐに気が付きますが、目立たない場所の傷などは見つけられないかもしれません。
新居で一段落着いたら、家具等に傷がついていないか見回ってみましょう。
荷物の破損、紛失等で生じた損害の賠償額についても、運賃等の合計額の範囲内となっていることを理解しておく必要があります。
まとめ
標準引越運送約款は、引越業者(荷受人)と利用者(荷送人)が揉め事を起こさないように定められたルールです。
法律ではないので、もしも問題が起こったら、引越業者と話し合ってみましょう。
話し合って解決しない場合は、国土交通省や全日本トラック協会、全国の消費生活センターへ連絡して、相談しましょう。
相手の引越業者が、明らかに標準引越運送約款を守っていないのであれば、積極的に対応してくれます。
標準引越運送約款は、引越業者だけにではなく、あなたにも引っ越しのルールを守ってくださいという主旨のものです。
引っ越し当日までには、しっかりと引っ越し準備を済ませておきましょう。